大判例

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札幌高等裁判所 昭和26年(う)423号 判決

この点の控訴趣意書(一)に、原判決が「本件燈油の話を定めたのは、組合の役員会議終了後雑談に移つてからであるから、全役員が居あわせて話を定めても役員会の決議といえない。」から、組合の業務行為でない旨判示したとの主張は誤解に出ずるもので、原判決が被告人組合を無罪とする理由の一は専ら控訴趣意書(二)記載のとおり本件石油の購入は被告人組合が利益を得て売却する目的で買受けたのであるから、組合の目的とする事業の範囲外の行為として、組合の行為とはならず、組合自体に刑責を負わすべきではない。とする点にある。

よつてこの点について検討すると、被告人組合は農業協同組合法に基き設立された組合であるから、同法第六条により営利を目的としてその事業を行つてはならないことは原判決説示のとおりである。そこで本件石油の購入が果して営利の目的で行われたものか、或は被告人組合の目的事業である組合員の酪農業又は生活に必要な物資の供給の一方法として行われたものであるかが問題となるのであるが、原審第一回公判調書中被告人組合代表者の供述記載に、見延正雄の検察事務官に対する供述記載を綜合して考えると、被告人組合の組合員は大部分乳牛を飼つているが、夜間搾乳するのに暗くて困るので、組合員が、搾乳する際の澄油として使用する為に組合員に分配する目的で、本件石油を購入したことを認むることが出来る。則ち本件石油の購入は被告人組合が、営利の目的でなく、組合員の酪農業に必要な物資を供給する為に購入したものと見るべきである。尤も右見延正雄の供述調書の供述記載及び柏崎熊太郎、住吉賢造、祐川健吾各提出の始末書の記載によると、組合の雑費として使用する為、分配に際し若干の利益を得たことが認められるけれども、利益を得ること自体が本件石油購入の目的であつたと認むべき証拠は見当らない。されば原判決は証拠の判断を誤り、延いて被告人組合の事業に属する本件所為を、組合の事業に属しないものと誤認したものというべきで、その誤認が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は理由があり、原判決は破棄しなければならない。

(二) 職権調査

記録を精査し、職権を以て按ずると、被告人組合は農業協同組合法に基いて設立された法人であるが、法人はその代表機関によつて活動するのであるから、法人自体に犯罪能力を認めず、法人の刑事責任は専らその機関若しくは使用人等の行為に起因する責任であると解するのが正当で、臨時物資需給調整法もこの見地に立つて法人の処罰については特に第六条の規定を設けているのである。ところで、本件起訴状の記載によると法人たる被告人組合自体を行為者として処罰を求めていることが明らかであるに拘らず、原裁判所がこの点につき何等の措置も講じないで、そのまま審理を進めているのは、その訴訟手続において未だ審理を尽さない違法ありというの外なく、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点からも原判決は破棄せざるを得ない。

尚附言すれば、原判決が本件所為を無罪とする第二の理由は、被告人組合は石油製品配給規則第十二条の規定する需要者でないというにあるようであるが、同条にいわゆる需要者とは、消費者とその意義を異にし、被告人組合のように組合員に分配する為に必要とする者をも包含するものと解すべきであるから、この点において原判決は法令の解釈適用を誤つたものというの外はないけれども、既に原判決が本件を以て被告人組合の事業でないとして無罪を言渡す以上、この点の誤は判決に影響を及ぼさないものと認め、破棄の理由とはしない。

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